キャメロットから遠く離れた洞窟の中。アヴァンクを使って伝染病を起こし、キャメロットとウーサー王を破滅させる企みをマーリンに阻止された魔女ニムエが、水鏡を前に不敵な笑みを浮かべてまた何かの呪文を唱えていた。魔術を施した水に、手にしたゴブレットを浸したニムエは、マーリンの名前を口にする。 キャメロットのウーサー王は、長年の敵ベイヤードと和平を結ぶこととなり、キャメロット城を訪れるベイヤード隊の出迎えと祝宴の準備で城内は大騒ぎとなっていた。あれこれと使い走りにこき使われる事にマーリンは不満たらたらだが、廊下でつまづいたベイヤード隊の美女カーラを手伝い、たちまち機嫌がよくなった。その一際目を引く美女が、自分の命を狙っている魔女ニムエだとも知らずに・・・。 マーリンを確認したニムエは、ベイヤードからの贈り物を保管してある部屋に魔術を使ってこっそり入り込み、荷物の中のゴブレットを自分が持ってきたものと摩り替える。 |
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普段であればマーリンは宴の場に出席することなど叶わないが、長ったらしい退屈な挨拶を自分だけが聞かされなければならないことに不満を持つアーサーによって、マーリンも宴に出ることとなった。ただし、和平調印の係としての衣装を身に着けて。 道化のような格好をさせられ、しぶしぶ宴に出たマーリンは、ベイヤード一行の中に先ほどの美女カーラを見つけた。ベイヤードから和平の印としてウーサーとアーサーにゴブレットが披露される。顔色を変えたカーラに呼び出されたマーリンは、廊下でベイヤードからアーサーに贈られるゴブレットに毒が仕込んであるのを見たと知らされ、慌てて宴会場に戻る。 ベイヤードの長い乾杯が終わり、アーサーがゴブレットに注がれたワインに口をつけようとした時、飛び込んできたマーリンがアーサーを止める。「そのゴブレットには毒が盛られている」と。 殺気立つ両国の兵士。ベイヤードは毒など仕込んでいないと主張し、もし毒が仕込んであったら好きにすればよいと言う。ウーサーは、マーリンの疑いの真偽を確かめるため、マーリンにそのゴブレットのワインを飲み干すように命じる。本当に毒が仕込んであれば、マーリンが死ぬとアーサーは反対するが、それ以外に方法がないことを悟ったマーリンは覚悟を決めてゴブレットを煽った。 すべてを飲み干したマーリンだったが、特に異常は見られない。ホッとした空気が殺伐としたものに変わりかけた時、マーリンに異変が起きた。床に倒れこんだマーリンを、アーサーとグウェンがガイウスの部屋に運び込み、ベイヤード一行は投獄される。 ガイウスは、マーリンが強力な毒に侵されていること、4日以内に解毒剤となるモーティエスの花を手に入れなければ、マーリンの命がないとの診断を下す。しかし、解毒剤となる花はキャメロットから離れた洞窟の中にあり、さらにその洞窟は一撃で命を落とす魔獣によって守られているという。 厳しい現実を前に苦悩するも、アーサーはマーリンを助けに行くことを決意した。しかし、ウーサーはアーサーの出兵を認めない。たかだか召使一人のために、キャメロットの跡継であるアーサーを危険にさらすわけにはいかない。王になるということは、腹心の部下を犠牲にせざるを得ない時もあることをこの機会に知れと命令するウーサー。自分のために死に掛けているのに、とのアーサーの訴えもウーサーには届かず、ウーサーは衛兵にアーサーを城壁から出すなとの命令を下した。だが、アーサーはモルガーナに励まされ、このままマーリンを死なせるわけにはいかないと考えて衛兵の制止を振り切って解毒剤となる花を取りに単身馬を駆る。 アーサーがキャメロットを発った後、ガイウスはマーリンの病状が通常よりも早く進行していることに気が付いた。病の最終段階でしか現れない発疹がマーリンの腕に現れたのだ。 それはつまり、マーリンの命の灯火が、あと1日しかないことを意味する。ここまで早い病の進行を引き起こすのは、強力な魔術の干渉以外ありえない。 ガイウスは、宴の途中でカーラがマーリンを呼び出したことに気づいていた。グウェンに牢内にいるベイヤード一行の中にカーラがいるか確認させたところ、既に影も形もなくなっていた。カーラが強力な古代魔術を操れる魔女ニムエであることを確信したガイウスは、ニムエがアーサーを待ち構えていることに気づきアーサーの身を案じる。 ガイウスの思案どおり、アーサーが解毒剤採取に向かったことを知っていたニムエは、洞窟の入り口でアーサーを待ち受ける。アーサーを足止めし、魔獣にアーサーを襲わせることには成功したが、アーサーが魔獣を返り討ちにしてしまったため、舌打ちをする。しかし、ニムエは土地に詳しいと言ってアーサーを洞窟内に案内することにした。 ニムエの案内に従って解毒剤である花の咲く場所に到着したアーサー。崖の途中に咲くその花を取るには、底なしに見えるような谷底に突き出す不安定な足場を進むしかない。ニムエに下がるように言いつけて足を踏み出したアーサーの後ろで、ニムエが足場を崩す呪文を唱え出す。ニムエの呪文を耳にしたアーサーはニムエの意図に気づくが、足場が崩れて咄嗟に崖に飛びつくことしか出来なかった。 崖の小さな足場に掴まり、辛うじて転落を免れたアーサー。そこに、彼を狙って大きな蜘蛛がやってきたが、アーサーは剣で蜘蛛を撃退する。蜘蛛が1匹ではないことを示唆した上で、「お前は私が殺す運命にはない」と言い捨ててニムエは姿を消した。ニムエが去ったことで明かりが消え、洞窟内は暗闇に包まれる。微かに差し込む光の中、彼女の言葉どおり大量の蜘蛛が自分めがけてやってくることに気づくアーサー。今すぐ逃げ出さなければならないが、その前に、アーサーはぎりぎり手が届くか届かないかのところに咲いていた解毒剤となる花に必死で手を伸ばした。 その頃、マーリンはひどい熱にうなされうわ言で呪文を唱えていた。用事を見つけてグウェンを外に出したガイウスは、マーリンがアーサーの名前を呼び、早く逃げるようにと言っていることに気が付く。さらに、マーリンは突然右手のひらに光の球を出現させ、ガイウスを驚かせた。 蜘蛛の襲来を視界に捉えながら、何とか解毒剤の花を摘み取ったアーサーだったが、洞窟内が暗すぎて逃げ道がよく分からない。と、突然光り輝く球体がアーサーの後ろに現れた。魔術師の攻撃かと疑ったアーサーだったが、それが自分を導くように動くことに気が付き、球体の動きに合わせて必死で崖をよじ登った。間一髪でアーサーが洞窟から脱出すると、光る球体はどことも知れず消えていく。と同時に、マーリンの手のひらで光っていた球体も消えてなくなった。 馬を駆ってキャメロットに帰還したアーサーは、ウーサー王の命を受けた衛兵によって牢屋に入れられる。自分はここに1ヶ月閉じ込められても構わないから、解毒剤の花をガイウスに届けて欲しいと懇願するアーサー。ウーサーは渡された花を床に投げ捨てることでアーサーを罰する。鉄格子の外に打ち捨てられた花に、アーサーは必死の思いで手を伸ばす。 マーリンの容体がいよいよ悪くなった。アーサーが持ち帰ったはずの花がなければマーリンは助からない。危険を承知でグウェンが王子への食事係になりすまし、アーサーが大事にとっていた花をなんとか受け取り、ガイアスのもとに急いだ。 急ぎ解毒剤を調合するガイウス。しかし、魔法が干渉している病を治すには、解毒剤にも魔法をかける必要がある。魔法が禁じられているキャメロットで呪文を唱えることには相当のリスクが伴うが、ガイウスは背に腹はかえられないと、グウェンに水を汲みに行かせた隙に呪文を唱えた。無事、解毒剤に魔法がかかったことを確認し、戻ってきたグウェンと共にガイウスは解毒剤をマーリンに飲ませた。 ガイウスとグウェンが見守る中、解毒剤を飲んだマーリンは心臓と呼吸が止まってしまう。間に合わなかったと嘆く2人だったが、マーリンはなんとか死の淵から生還を果たした。 倒れた後のことを、光の球でアーサーを導いたことも含めてマーリンは覚えていなかった。マーリンの回復をガイウスとグウェンは喜ぶ。 ガイウスは、ベイヤードと戦を交えようとしていたウーサーの下へ駆けつける。アーサーを毒殺しようとしたのがベイヤードではなく、魔女ニムエであることを告げられたウーサーは、戦争を直前で回避した。 自国に戻るベイヤード一行を見ながら、ウーサーはアーサーに洞窟で出会った女のことを尋ねる。自分を殺さなかったこと、自分を殺すことは彼女の定めではないと言われたことを、首をひねりながら告げるアーサー。ウーサーは複雑な表情でその話を聞いていた。魔術師は悪だと繰り返すウーサー。まるで彼女を知っているかのような口ぶりにアーサーは疑問を感じるが、「魔術師を1人知れば残りを知ったようなもの」と言われてそれ以上の追求はしなかった。 王の命令に背きはしたものの、正しい行動をした。誇りに思う。とウーサーに褒められるアーサー。その後、マーリンの様子を見に行き、翌日からまたアーサーの小間使い仕事に戻るように告げる。去り際、アーサーに改めて感謝を述べるマーリン。同じくアーサーもマーリンに感謝の言葉を口にした。 なぜニムエがアーサーを直接殺さなかったのかと疑問を口にするマーリンに、ガイウスは彼女の狙いがアーサーではなくマーリン本人だったと考えられることを告げた。 |

[和訳・原作・収録DVD]

[放送データ]
2008/10/11 19:30~ BBC One Episode 3:The Poisoned Chalice |
2009/10/26 20:00~ NHK BS2 第3話:モーティエスの毒杯 |
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